社交不安障害のイメージ画像

人前に立って、何か話をしなければならない場合に、緊張するのは当たり前のことです。その緊張が極端に強く、人と関わる様々な場面で、精神的に非常に負荷を感じて、顔が赤くなったり、動悸が激しくなったり、さらに発汗や吐き気などの身体的症状が現れてしまうのが社交不安症です。かつては対人恐怖症とも呼ばれていました。

こういった症状を人に見られたくないという思いから、さらに人前で話すことや人の視線に恐怖を覚えるようになるという悪循環に陥り、人とのかかわりあいを避けようと、ひきこもりになったり、アルコール依存になったり、さらにはうつ病を発症するなど、日常生活に支障を咳足してしまうようになる危険性がありますので、早期の対処が必要です。

社交不安症には、以下のような種類があります。

対人恐怖症
自分に対する他人の目や、他人の評価が過剰に気になり、他人と接したり話をしたりするときに、極度に緊張し、恐怖や震え、めまいなど感じてしまう。
赤面恐怖症
人前に出ると緊張して顔が赤くなり、さらにそれを強く不安に思い、隠したいと思うことでまた顔が赤くなり、苦痛が強くなって、日と接するのを避けるようになってしまう。
発汗恐怖症
緊張するとひどく発汗し、ハンカチを持たないと落ち着かない、また発汗することを恥ずかしく思い、人前に出られなくなってしまう。
場面恐怖症(場面緘黙症)
学校や職場などで人前に出ると、緊張し声が震える、あるいはうまく言葉が出なくなって黙り込んでしまう。
書痙
結婚式の受付などで名前を書くなど、人前で字を書こうとすると緊張や不安を感じて、手が震えてしまい、字が書けなくなる。

社会不安症の原因は、はっきりとはわかっていませんが、近年、社会不安障害を抱える人が人前で話すときに、大脳の偏桃体が一般の人より過剰に反応していることがわかってきました。通常、論理的な思考を司る前頭葉が、偏桃体の過剰な反応を抑えているのですが、社会不安症の人は、この前頭葉の機能が上手く働かないため、セロトニンなどの脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、中枢神経系が正常に機能しなくなって、社会不安障害が発症するのではないかと考えられています。

社会不安障害の治療では、抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や、ベンゾジアゼピン系抗不安薬などが有効であることはわかっており、それらを用いた薬物療法を行います。

さらに認知行動療法として、患者様が今、とらわれている恐怖や不安が、自分の思い込みに過ぎないことを、ご自身と向き合うことで感じ取れるよう、患者様とともに考えつつ、不安や恐怖を抑制して、症状を改善します。そして徐々に人前でできることを増やし、日常生活に支障をきたさないようにしていきます。

社交不安障害は、もともと素因のあったこどもが、思春期になって発症することが多いと考えられてきましたが、現在では30~40代で社会の中核になってから、会議など、人前で話をしなければならない場面で、突然発症したりすることも多く見られるようになりました。社会不安障害は、あくまで病気ですので、頑張って何とかしようとすると、悪化する可能性もあります。早めに医師にご相談ください。