適応障害のイメージ画像

人生においては、入学・進学や就職・転職、配置転換、結婚、離婚等、環境や人間関係が大きく変わる転機がいくつかあります。そうした時に、うまく適応できず、強いストレスを受けて、抑うつや不安感などの精神症状や、不眠やめまいなど様々な身体的症状、そして行動面にも変化が現れて、日常生活や社会生活に支障をきたしてしまうのが「適応障害」という病気です。

「うつ病」とも症状が似ている部分がありますが、「うつ病」の場合は、ストレッサー(特定の環境や状況などストレスの原因となるもの)から離れても、すぐに改善されず、抑うつの状態が続きますが、「適応障害」では多くの場合、ストレッサーから離れると症状が治まり、通常の日常生活を送ることができるようになります。たとえば職場環境がストレッサーとなっている場合、勤務日は症状が現れますが、休日には気分も楽になるというものです。

通常ストレスの原因となる環境変化から1カ月以内に症状が現れ、最大で6カ月で収まるとされていますが、ストレスを受ける状態が改善されない場合は、それ以上、続くこともあります。持続的に憂鬱な気分が続いてしまう場合は、「うつ病」となっている可能性があり、注意が必要です。

ちなみに大災害や事故、犯罪、戦争など非日常的な出来事に遭遇した際、その後にフラッシュバックや不眠症、不安感などが出る場合があります。これは急性ストレス反応というもので、症状がある程度続くと心的外傷後ストレス(PTSD)となります。

適応障害では症状の診断基準として、“ストレス因により引き起こされる情緒面や身体面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態”とされています。それにより問題行動が現れてしまうのも適応障害の特徴です。

情緒面の症状例

身体面の症状例

適応障害の症状に伴う問題行動例

こうしたことが起こるきっかけとしては、転職や配置転換などにより仕事の質や量の負担が増し、キャパシティオーバーとなって、過労や不眠が重なってしまうことや、マニュアルや勤務体制に縛られて、自分の価値観と異なる仕事しなければならないこと、ライフスタイルを変えられてしまうことなどがあります。また、職場や学校で人間な関係がうまくいかないことも強い要因となります。「昇進うつ」と呼ばれるものもあります。これは上司や部下の間に立って調整を強いられる中間管理職の方などが、様々なプレッシャーをきっかけとして発症するものです。

同じようなストレスにさらされても、適応障害になる人とならない人がいますが、これは環境変化などの外的要因に加えて、元来の性格やストレスへの対処能力、耐性などの内的要因も考えられるでしょう。また周囲に相談に乗ったり、サポートしたりしてくれる人がいるか、趣味などストレスを発散させる場があるかなどの、サポート環境の有無も、適応障害の発症には大きく関わってきます。

治療としては、まずストレッサーを取り除く、遠ざけるということが課題となります。業務内容や人間関係の変容が難しい場合は、配置転換や一時的な休職などの「環境調整」をする必要があります。

適応障害を治療する薬というものはなく、薬は対症療法としての使用となります。不安や不眠に関しては、ベンゾジアゼピン系薬、うつ状態には抗うつ薬を用いる場合がありますが、認知行動療法などにより、ストレスに対する患者様の適応力を高めることも大切です。自分のストレスの受け止め方のパターンや考え方の癖を認識し、それらを変えていくことで、ストレスから受ける影響を抑えていくものです。また現在抱えているストレス因となる問題と症状自体に焦点を当て、協同して解決法を探っていく問題解決療法もあります。

適応障害で大切なことは、ゆっくりと休むことです。どうしていいか迷ったら、専門医にご相談ください。当院ではしっかりとしたカウンセリングを行い、ストレスへの対処法や付き合い方、また環境調整へのアドバイスなども含め、豊富な経験と知識をもって、患者様に寄り添い、心の負担の軽減を図っていきます。