こころの病気を知ろう② 気分障害-双極性障害-
本日のテーマ
気分障害のひとつである「双極性障害」についてです。「躁うつ病」という呼ばれ方をすることもあります。
「うつ病」と聞くと何となくイメージしやすいかもしれませんが、「躁」という言葉は聞き馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。
「躁」の状態は基本的に気分が高揚しています。
ちょっとテンションが高いという程度ではなく、周りの人が「いつものあの人とは違うけど、どうしたのかな?」と心配になるほど極度に高揚しています。
その躁状態とうつ状態を繰り返す病気を双極性障害といいます。
「躁うつ病」という名前から「うつ病」のひとつと思われがちですが、2つは異なる病気です。
では、詳しくみていきます😊
症状
よくみられる症状は以下のようなものがあります。
・気分が高揚する
・イライラする、些細なことですぐに怒鳴る
・眠らなくても平気になる
・猛烈な勢いで話し続ける
・自分が偉くなったように感じる
・考えが次々と浮かび、思考がまとまらない(観念奔逸)
・ひとつのことに集中できない
・非常に活動的になる、疲れを自覚できず活動をやめない
・制御のきかない浪費
・1日中憂うつな気分が続く
・眠りたくても眠れなくなる
・疲れやすく、体がだるい
・ものごとに集中して取り組めない
・なにごとにも興味や関心がなくなり、何をしても楽しくない
・悲観的になり、死にたい気持ちが出る場合もある
また、双極性障害にはⅠ型とⅡ型があります。
Ⅰ型:抑うつ状態+生活に支障が出るほどの躁状態
Ⅰ型の場合は治療せずにいると家庭や仕事が破綻し、人生を棒にふってしまう危険があります。何より心配なのは、死にたい気持ちが強まり自殺の恐れがあることです。とにかく早急な治療が大切です!!
Ⅱ型:抑うつ状態+生活に著しい支障は出ない軽い躁状態
Ⅱ型は「軽い」と書いていますが、だからといって軽い病気ということではありません。うつ状態の期間が長いため自殺のリスクも高いと言われています。それに躁状態とうつ状態の再発を繰り返すことで生活に支障が出ることもあります。Ⅰ型と同じように早めの治療が大切です。
原因
双極性障害の原因は完全には解明されていませんが、うつ病と同じように心理的・身体的ストレスがかかることで、脳の働きに異常を起こし発症するといわれています。
さらに、うつ病よりも遺伝的な要素が強いともいわれており、血のつながったご家族の中に双極性障害の方がいる場合は発症の頻度が上がります。
そして、はじめはストレスがきっかけになることが多いですが、再発を繰り返すうちにストレスがなくても再発するようになります。
治療せずにいると再発の周期がだんだん短くなってくるので、繰り返しますが早期の治療が大切です。
治療
双極性障害の治療は、主に薬物療法と再発予防があります。
薬物療法
双極性障害は脳の働きによる病気のため、その働きを正常に戻すためにお薬による治療は不可欠です。
気分が大きく移り変わる病気ですので、気分を安定させる薬が中心となります。その他にもそのときの症状に合わせてお薬を使い分けます。
ときには血中濃度を測りながら慎重に投与する場合もあるので、処方された量と回数を正確に守って服用する必要があります。
ここで注意なのは、双極性障害のうつ状態だけをみて「うつ病」と診断されてしまう場合があることです。
そうなると抗うつ薬を投与され、急激に躁状態を引き起こしてしまう危険性があります。
浪費などの明らかな躁状態は本人や周囲の方も気づくのですが、軽い躁状態だと「調子がいい」「気分がいい」と認識されて気にも留められないことが少なくありません。そうなると診察場面では語られないので、気づかれないまま…ということもあります。
経験豊かな先生の診察を受けること、少しでも「あれ?」と思ったらセカンドオピニオンを受けることが望まれます。
再発予防
双極性障害は長く付き合っていく必要がある病気です。できるだけ再発を繰り返さないように、日常から予防していくことが大切です。
そのために効果的なのは心理教育です。
心理教育とは簡単にいうと自分の病気について勉強することです。個人で受ける場合とグループで受ける場合があります。
その過程の中で自分の病気と向き合い、受け入れられるようになり、自分でコントロールできるようになることを目的としています。
病気について知ることで、再発の兆候にすぐ気づくことができます。すぐに気づけばそれに対する治療にすぐ取りかかることができ、再発予防につながるというわけです。
その他に、認知行動療法や家族療法も効果的だといわれています。
さいごに
どの病気でも共通しているのですが、早期発見・早期治療は本当に大切です。
特に双極性障害の「躁」の状態では、生活や人生を破綻させるような行動をとってしまう可能性があります。
そうなってしまうと、その方の”本来の人生”や”その方らしさ”まで失われてしまいます。
そうならないために、少しでも早く治療につながる人が増えてほしいと思います。