クリニック新聞6月号「ヒトはなぜ繁栄できた?」
こんにちは😀🌻
暑い日が続きますが、夏バテなどしていませんか?☀
先月号のクリニック新聞についてご紹介します♪
テーマは「ヒトはなぜ繁栄できた?」でした💡
「ヒトは他の哺乳類より1年生理的早産である」という言葉を聞いたことがありますか?
多くの哺乳類の赤ちゃんは、生まれた瞬間に立ち上がりお乳を飲み始めるのに対して、ヒトの赤ちゃんは立つことも食べることも1人ではできない状態で生まれてきますよね。
他の動物と比べて、こんなにか弱い生き物であるヒトが地球上で生存し続けることができたのはなぜでしょう?
だって、人間より体が大きくて力強い動物はたくさんいるし、

仲間同士でコミュニケーションをとる動物はヒト以外にもいます。

記憶力…でもなさそうです。最近では単細胞生物であっても記憶が保存されることが分かってきました。

でも、ヒトだけが唯一できることがあります!
それは「未来に対する展望をもつことができる」ということです✨

ヒトは未来への感覚をもち、直近のことだけでなく、遠い未来のことも考えて計画することができます。
例えば、渡り鳥は寒い冬を越すために大移動しますが、それは未来に思いを馳せて行動を決めているわけではなく、本能的な直感に従って動いているので、ヒトのそれとは異なります。
そして、ヒトは遠い未来を考えるようになった結果、「ものごとはいつか終わる」「私たちはいつか必ず死ぬ」という命の有限性を理解することができるようになりました。
生き物にとって「死」は圧倒的な恐怖を喚起するものです。
それはヒトも動物も同じ。
でも、ヒトはその恐怖を和らげるために様々なものを作り出しました。
例えば、運命や神の存在を作り出すことで、「自分の命には運命がある」と想像することができ、これから自分に起こるできごとを受け入れようとしました。

また、勧善懲悪の物語を語り継ぐことで、「善い行いをすれば安全に平和に暮らせる」と信じることができます。

実際の生活では、善い行いをしたからといって報われない場合もあるし、理不尽に危険な目にさらされることもあります。
でも、その世界を生きるにはあまりに怖いので、穏やかに過ごすためにヒトは「物語」を作ったのです。
私たちは困難に遭遇し、それが理解を超える状況であったとき、はじめは混乱して感情が揺さぶられます。
これを「トラウマ」と呼ぶことがあります。
次第に時間が経ち気持ちが落ち着き始めると、その事態を納得させるための物語を作り始めます。
ときには自分自身を責める考えが次から次へと浮かび、自らを苦しめることもありますが、同時に新たな物語を見出す力も秘めています。
その新しい物語は、見方を変え、それによって思いもよらなかった結果や解決策を見つけ出すことがあるのです。
こんなふうに、私たちはこの地球上において生き延びるために物語を語ってきました。
みなさんが診察の中で紡ぐ言葉にもひとつひとつに意味があります。
言葉の力、物語の力を信じてみてください♪
【引用文献】新井陽子(2024)性暴力と私達-未来を生きるレジリエンス 自分の物語を語るということ.こころの科学,234,9-14