こころの病気を知ろう⑥-摂食障害(神経性やせ症)-

本日のテーマ

痩せたいと思って食事の量を減らしたり、ストレスが溜まってやけ食いしたりする経験は誰でも一度はあるのではないでしょうか。

では、十分痩せているのに食事を減らし続けたり、普段では考えられない量を食べ続けたりすると、どうなるでしょうか。

本日は、「摂食障害」についてご紹介します。

摂食障害とは

摂食障害とは食行動を中心とした病気で、主に①神経性やせ症②神経性過食症の2つに分かれます。

食事は人が生きるために欠かせないものです。

これに関する病気ということは、体の問題と深くかかわっており適切な治療を行わなければ命に関わる場合もあります。

こう聞くと怖い気がしますが、そのくらい治療がとても大切だとお伝えしたいのです。

そして、この病気は「痩せたいから食べない」「すっきりしたいからたくさん食べる」というような単純なものではありません。

心の問題も複雑に絡み合っており、解決には専門機関の受診が必要です。

神経性やせ症(拒食症)

「拒食症」という言葉の方は聞き馴染みのある方が多いかもしれません。

ダイエットがきっかけになることが多いですが、体重が減るにつれて達成感を得られ、徐々に食事制限の仕方は極端になっていきます。

以下のような行動がみられたら受診のサインです

・カロリーを厳密に計算する

・食べ物を小さく切ってゆっくり食べる

・噛むだけで飲み込まずに吐き出す

・様々な理由をつけて食事の場面を避ける

・全く食べていないのに「お腹が空いていない」「もう食べた」と言う

・過剰に運動する

・下剤を乱用する

ただ、受診のサインといっても、本人は受診を嫌がることも少なくありません。

摂食障害では自分の体重や体型の感じ方が障害されています。

実際には標準体重より著しく低い体重ですが、本人はむしろ「自分は太っている」と感じます。

そして、体重が増えることに恐怖を抱き、制限がどんどん加速していきます。

この病気の心配なことは実際の体は低体重なので、低血圧・心拍数低下・低体温・無月経・便秘・貧血・脱水・肝機能異常・・・など多くの身体症状があらわれることです。

低体重の期間が長くなると、脳の萎縮もみられるようになります。

本人が受診を嫌がる理由

摂食障害の方の心には、「治りたい自分」と「治りたくない自分」の両方があるかもしれません。

「ダイエットで体重が減って達成感が得られた」ときをイメージしてみてください。

きっと誰でも嬉しいし、少しだけ自分に自信がもてたような気がしますよね。

もし、それまで全てがうまくいかないと感じていたり、自分には自信をもてるものがひとつもないと感じていたりしたらどうでしょう。

「ダイエットで得られた達成感」や「痩せた自分」は大きな意味をもつと思います。

もちろんこれが全ての摂食障害の方にあてはまるわけではありません。

でも、「体重を減らすこと」にそれぞれの方の重要な思いがあるはずです。

治療するということはそういう思いを手放すことを意味するので、とても怖いことです。

だからといって治療しなくてよいというわけではなく、そういう思いを抱えているということを治療者含め周囲の方々が知る必要があると思います。

治療

では、実際にどのように治療していくのでしょう。

主に、食行動の改善、身体面の改善、心の問題の改善が目標となります。

一般的には外来での治療を行いますが、低体重が著しい場合や電解質異常など身体症状が強い場合は入院が必要です。

そうでない場合でも、入院治療は改善に効果的なのですすめられることがあります。

〇食行動と身体症状

食事については3食規則正しく食べることはもちろん、摂取カロリーを細かく設定します。

飢餓状態が長く続いていた体に一気にカロリーを摂取させると危険なので、単にたくさん食べればいいわけではありません。

800~1200kcal/日程度から開始して、血中リン濃度をチェックしながら少しずつ増やしていきます。

場合によっては、経管栄養や点滴を行います。

ただ、本人は体重が増えることに恐怖があるので、無理やり(治療には必要ですが本人は無理やりと感じてしまいますね)カロリーをとらなければいけない状態は非常に苦痛です。

その結果、どうにか体重を減らそうと入院中もスタッフの目を盗んで食事をトイレに捨てたり、常に歩き回ってカロリーを消費しようとしたりします。

そのため、「どれだけカロリーを摂取したか」ではなく「体重がどの程度増えたか」を治療の目安にします。

一例として、

・~32.0㎏未満:ベッドで安静

・32.0㎏~:室内で静養

・32.5㎏~:病棟内でフリー

・33.5㎏~:外出可

このように体重によって安静度・面会・電話・入浴などの活動の制限を緩めていきます。

〇心の問題

同時に心の問題に対する治療も欠かせません。

本人が受診を嫌がる理由として、「体重を減らすこと」に重要な思いがあるからだとお伝えしました。

ここにアプローチしていきます。

「痩せていないと他の人に認めてもらえない」「体重が増えたらまた何もかもうまくいかなくなってしまう」

これらの思いは本当にそうでしょうか。

実際には体重が増えると健康になり、食事のことばかり考えていた時間をいろいろなことに使えるようになり、仕事や学校がうまくいくかもしれません。

そして何より、その人自身には「痩せている」ということ以上に大切な価値があるはずです。

考え方や感じ方の偏りを修正し、自分自身の本当の価値を見つけることで、痩せる自分にこだわらずに済むようになることを目指します。

それを見つけることは容易ではないですが、自分らしい人生を歩むためにはとても意味のあるプロセスだと思います。

つづきは次回

今回はとても長くなってしまいました😳💦

症状や治療について丁寧にお伝えしたいので、「神経性過食症」は次回ご紹介することにします!

今回書ききれなかった諸々もあるので、ぜひ読んでくださるとうれしいです😊

ではまた次回~🌱