クリニック新聞8月号「楽園ネズミと植民地ネズミ🐭」
こんにちは😆🍃
先月号のクリニック新聞のテーマは「楽園ネズミと植民地ネズミ」でした。
少し不思議なタイトルですね🐭
では、内容をご紹介していきます♪
1978年にカナダの大学で依存症に関する興味深い実験が行われました。
まず、ネズミを16匹ずつ2つのグループに分けます。
1つ目のグループは「楽園ネズミ」です。
こちらのエリアはふかふかの床で仕切りはなく、16匹のネズミたちは自由にコミュニケーションをとることができます。
回し車や空き箱など遊び道具もたくさん置いてあります。
エサは常に置いてあり、いつでも好きなだけ食べることができます。


一方で、2つ目のグループは「植民地ネズミ」です。
こちらのネズミたちは1匹ずつ別々のオリに入れられ、仕切りで自分以外のネズミの姿は見えません。
狭いオリでじっとしているしかなく、エサは決められた時間に決められた量だけです。


それでは実験スタートです💡
それぞれのグループに2種類の飲み物を与えます。
①普通の水 ②モルヒネ入りの甘い水
これを2種類ともいつでも好きなだけ飲めるようにして、57日間観察しました。
57日後…何が起きたでしょうか?
「楽園ネズミ」では16匹中15匹が普通の水だけを飲みました。
1匹だけはモルヒネ入りの水を飲んだのですが、植民地ネズミの20分の1の量でした。
一方で、「植民地ネズミ」は16匹ともモルヒネ入りの水の方を多く飲みました。
日を追うごとに量が増え、ネズミたちはモルヒネの影響でふらふらと酔っぱらっていました。
この実験から分かるのは、「どんな状況だと依存症になりやすいか」ということです。
自分のペースで食べることも自由に動き回ることもできず、他のネズミとのつながりを断たれた「植民地ネズミ」は、モルヒネ入りの水を飲み続けて依存症になってしまいました。
きっとつらい環境をやり過ごすには酔っぱらわずにはいられなかったのでしょう。
一方で、「楽園ネズミ」は一度はモルヒネの快感を経験したにもかかわらず、それよりも自由に動き回ることや仲間とコミュニケーションをとることの方が楽しかったのだと思います。
これはひとつの実験ですが、人間にも同じことがいえると思います。
そもそも人は何かに依存せずに生きることはできません。
でも、頼れる人がいない、夢中になれる趣味もない、何もかもうまくいかない…というように、寂しく、孤独感を抱くようになるとモルヒネで酔っぱらうネズミのように自分を奮い立たせるしかなくなるのかもしれません。
このような依存症の人を救うためには、世間の人たちが「依存症」に対する理解を深めることも重要なことだと思います。
間違った価値観や非難を押し付けるのではなく、「理解」する姿勢が広まることを願っています。
【引用文献:松本俊彦(2022)世界一やさしい依存症入門 やめられないのは誰かのせい?.河出書房新社】