こころの病気を知ろう⑦ -摂食障害(神経性過食症)-

本日のテーマ

摂食障害は、「神経性やせ症」と「神経性過食症」の大きく2つに分けられます。

「神経性やせ症」については前回ご紹介したので、そちらをご覧ください。

今回は「神経性過食症」についてご紹介していきます。

神経性過食症

「過食症」と呼ばれることもありますが、医学的には「神経性過食症」「神経性大食症」という言い方をします。

簡単に言うと、食のコントロールができなくなり食べ過ぎてしまう病気です。

”食べ過ぎてしまう”と聞くと、「そんなの誰にでもあるんじゃないの?」と思うかもしれません。

確かにストレスがたまってやけ食いをしたことがある人は多いと思います。

でもその場合は、それが気分転換になっているのではないでしょうか。

次の日に「昨日は食べ過ぎてしまったな~」と多少の罪悪感はあったとしても、そのせいで一日中何もできないほど落ち込むことはないですよね。

でも、神経性過食症の場合は、罪悪感でいっぱいになって仕事に行けなくなったり、100gでも体重が増えていたら生きている価値がないと感じたりします。

そもそも、食べる量は通常では考えられないほど大量であることが多いです。

食べるというより、”詰め込む”という表現の方が合っているかもしれません。

「おいしいなあ」なんて味わう余裕はなく、必死に詰め込んでいきます。

「過食嘔吐」とは

神経性やせ症の方は体重が増えることに過剰な恐れを抱いていますが、それは神経性過食症の方も同じです。

でも、たくさん食べてしまったら体重が増えてしまうのでは…と思いますよね。

そのため、自分で嘔吐を誘発したり下剤を使用したりして、体重を増やさないような行動をとります。

過食する時間以外は絶食をするという場合もあります。

ただ、「食べた分吐けば終わり」というほど身体は単純なものではなくて、嘔吐が続くと胃酸の影響で歯の表面が溶けて痛みが生じたり、口腔内の炎症が増えます。

また、胃酸や腸液が失われると体内のカリウムが失われ、低カリウム血症が生じます。

みなさんも体調が悪くて嘔吐したことはあると思いますが、とても苦しいですよね。

それが1週間に何度も起こると考えると、身体面への負担は容易にイメージできると思います。

中には「胃の中のものを全て出さないと落ち着かない」と感じ、何度も何度も嘔吐を振り返す方もいます。

想像すると痛々しいですが、神経性過食症の方の心はどのような状態なのでしょうか。

過食をする心

きっかけとしては、軽いダイエットの後に起こる場合もあれば、神経性やせ症の経過中に起こる場合もあります。

ストレスが溜まるとやけ食いをすることが習慣になっていて、そこに嘔吐が加わった場合もあります。

きっかけや原因はさまざまですが、過食や排出行動の衝動は自分の意志ではコントロールできないほど大きなものです。

これがこの病気のつらいところです。

過食をした後は猛烈な罪悪感に襲われることも嘔吐をして身体がつらくなることも、分かっているのに抑えられません。

この「コントロールできない感覚」が本人をより苦しめ、さらなる罪悪感が生まれます。

そして、少しでも体重が増えると失敗したと思い自己評価が低くなります。

体重が増えた体(実際には普通体型や痩せ型であっても)を人に見られたくないと思い、家に引きこもります。

また、過食のためには大量の食べ物を購入する必要があるので、お金がかかり生活面に影響します。

治療

外来治療が基本ですが、生活リズムや食行動を整えるために短期入院する場合もあります。

治療の目標は、「過食をゼロにする」ことではなく「コントロール感をとり戻す」ことです。

まずは毎日の生活パターンを把握し、生活リズムを決めます。

食事は3食が原則です。欠食すると次の過食を招いてしまうためです。

そして、適正な量であれば3食摂取しても体重は増加し続けることはない、ということを確認していきます。

また、心理教育によって病気に対する正確な情報を理解してもらったり、心理療法によって「太っている自分は生きている価値がない」などの考えを見直していきます。

さらに、過食しやすい環境(食べ物が近くにある・人の目がないなど)や気分の状態(抑うつ・不安など)に気づき、予防するための改善策を考えていきます。

10代の摂食障害

日本の調査では10代の摂食障害が年々増加しているという結果が出ています。

現代の日本はやせ思考が強く、「痩せている方がきれい」という価値観をもたれがちです。

特に10代の子どもたちはやせ願望をもつ子が少なくありません。

近年はコロナ禍によって人との交流が減った上に、メディアでは「コロナ太り」について報道されることもあります。

SNSを開けば痩せていてモデルのような女の子で溢れています。

でも、10代は心身ともに十分な栄養が必要です。摂食障害となっている場合は早急な治療が必要です。

もしかして?と思ったらすぐに医療機関にご相談ください。

精神科や心療内科の受診が難しい場合は、まずはかかりつけの小児科や内科でも相談は可能です。

体温が低くて手先が冷える、足が浮腫む、虫歯が増えた、月経がない、胃痛がひどいなど体の症状はありませんか?

その症状に合った診療科にまずは相談してみてください。

おわりに

摂食障害の人は、人に見られないようにしがちです。

食事をしていないことを黙っていたり、隠れて過食嘔吐をしたりします。

そのため周囲の人からは気づかれにくい病気でもあります。

でも、小さなサインはあるはずです。

体重は急に減っていませんか?何度も体重計を乗っていませんか?

最近外食を避けていませんか?食事の後にトイレに行くことが増えていませんか?

どうかサインを見逃さず、医療機関につながってほしいと思います。

確信はもてないけれど…という状態でもご相談は大歓迎です!

どのような状態であっても診察では丁寧にお話を聞いてくれますので安心してくださいね😊

お悩みの方はぜひご連絡ください🌱