こころの病気を知ろう⑧ -起立性調節障害-

本日のテーマ

お久しぶりのシリーズです😄

今回のテーマは「起立性調節障害」です。

主にお子様によくみられる症状で、特に思春期に多いです。

「なまけている」「ちょっと休んだら治る」と軽く捉えず、そのしんどさに寄り添い、サポートする姿勢が大切です。

では、具体的にどのような症状がみられるかご紹介します🌱

症状

起立性調節障害は、自律神経機能の異常により朝なかなか起きられない、立ちくらみ、めまい、動悸、息切れ、食欲不振、全身倦怠感、頭痛などの症状が起こります。

中高生の10%程度に該当するといわれており、思春期の体調不良の原因として無視できない疾患です。

割合としては男子より女子の方が1.5~2倍多い傾向があります。

また、朝起きられないため、不登校につながるケースも少なくありません。

診断については、基準となる症状が週1~2回以上存在することが前提で、小児科で「起立試験」と呼ばれる検査によって判定します。

単に血圧や脈拍を測定するだけで診断できるものではなく、構造化された検査を実施してその結果をもとに判定されます。

そのため、朝起きるのがつらそう、学校によく遅刻するなどの様子がみられたときは、すぐに小児科を受診するようにしてください😊

原因

起立性調節障害の原因として、大きく以下の2つがあります。

①第二次性徴期の影響

思春期は身体のさまざまな機能が大人に向かって変化していく時期です。この変化は自律神経系にも起こるので、循環器系との調節がうまくいかなくなる場合があります。その結果、立ち上がったときに血圧が低下したり、心拍数が上がりすぎたり、調節に時間がかかりすぎたりします。

②心理社会的ストレス

進学して環境が変わった、友人関係がうまくいかない、勉強についていけない、家族の仲が悪いなど、生活のストレスがこの疾患に影響しているといわれています。

治療

起立性調節障害だと診断されれば、お薬での治療を勧められることが多く、交感神経に作用して末梢血管の収縮を促すお薬が一般的です。

もちろんお薬は大切です。

でも、まずいちばん大切になるのは生活習慣の改善です。

またそんな普通のことを…と思われるかもしれませんが、自律神経の機能の異常を起こしているこの疾患において、生活習慣はかなり重要なのです。

具体的には、食事・運動・睡眠です。バランスよく三食とり、適度に運動し、夜はしっかり眠るようにしてください。

これは誰にとっても当たり前に大切ですが、起立性調節障害のお子さまはこの”当たり前”ができない状態になっています。

まず朝起きることができないですし、起きたとしても嘔気や頭痛でしんどい状態です。そんな状態では朝食をとることもできません。

そこでまずは「朝は水分だけでもとろう」と勧めます。

運動についても、本格的なスポーツをする必要はありません。横になった状態ではどんどん悪化してしまうので、午後からでもよいので散歩など軽い運動をするようにしましょう。

睡眠についても簡単ではなく、朝起きられないので午前中は活動が制限され、夕方から夜にかけて元気になることが多いです。そうなると、寝ようとしても寝つけない状態になってしまいます。

そこで、夕方以降はカフェインをとらないこと、22時頃までにはスマホやゲームをやめて就寝準備に入ること、照明や音楽は消して0時までには就寝することを意識してみてください。

「朝起きる」=「学校に行く」を切り離して

起立性調節障害は不登校につながりやすいというお話をしましたが、実際には「どちらが先か分からないなぁ」と感じます(私個人の意見です)。

起立性調節障害で起きられないから学校に行けないのか、学校に行きたくないから朝起きられないのかということです。

どうしても学校に行くのがつらい状態であっても、「行かなければならない」と感じている子どもがほとんどです。それでも不安で行けないとき、朝起きることは子どもにとって恐怖となります。

治療としていちばん大切なのは生活習慣の改善ですが、そのために「朝起きること」と「学校に行くこと」を完全に切り離してあげてください。

「朝起きたら学校に行かされるかもしれない」と思うと、起きられなくて当然です。

「学校に行くかどうかは今は置いておいて、体調を整えるためにある程度の時間には起きよう」と明確に説明して、子どもの不安を解消させるとそれだけで目覚めやすさが格段に上がると期待できます。

現実的になにができるか

大人たちは「子どもの生活はこうあるべき」という理想を抱きがちです。

ただ、子どももひとりの人間なので、なかなか理想通りにいかないものです。

大切なのは、「子どもと家族にとって現実的に取り組めることは何か」ということに注目する視点です。

「朝起きて遅刻せずに学校に行けるようになってほしい」ということが理想だとして、それを今すぐ達成させようとするのではなく、今日からできることは何なのか?を考えてみてください。

10分だけ一緒に散歩してみよう、昨日より30分早く寝てみようなど、少しの変化で十分です。

ちょっとした取り組みが生活リズムを改善させるきっかけとなり、それが体調の変化につながり、結果的に自信を回復していきます。

私たち大人も難しいように、子どもたちにとっても急に行動を変えることは難しいです。

「少しだけ頑張ればできる取り組み」を地道に続けることで、大きな変化につながると信じて見守りましょう😊

気になることがあれば

起立性調節障害の診断は小児科で行う場合がほとんどですが、「もしかしてうちの子も?」と気になった場合は、当クリニックでもご相談いただけます🌼

さまざまな可能性を考慮しながら先生がしっかりとお話を聞き、必要があれば小児科での検査を勧めてくれます😊まずはお気軽にご相談くださいね✨

引用文献:小柳憲司(2023)子どもの体調不良へのかかわり-起立性調節障害、生活リズムの乱れ、不登校、ゲーム依存.こころの科学 232,58-61