統合失調症の早期治療について

身体の病気について、健康診断を受けて早期発見・早期治療することが大切ということは多くの人にとって当たり前のことだと思います。

これは精神的な病気についても同じです。

早期に異変に気づき、早期に医療機関や専門機関につながることで症状が緩和されることは多いです。

精神科や心療内科でよくみられる疾患として、「統合失調症」というものがあります。

本日は、この統合失調症にとって治療の重要性についてみていきたいと思います💡

治療開始は早いほどよい

統合失調症は、明らかに発症したとわかる時点より何年も前から病的なプロセスが始まります。

認知機能障害(記憶力や注意力の低下など)や陰性症状(意欲の低下や感情の平板化など)が進行し、脳の萎縮がすでに始まっている場合があります。

陽性症状(幻覚や妄想など)という「統合失調症かも?」と気づかれやすい症状が出るのは、くすぶっていた火が一挙に燃えあがったような状態です。

無治療の期間が長ければ長いほど脳はダメージを負ってしまい、それが積み重なると簡単に戻すことが難しくなってしまいます。

そうならないために、少しでも早く治療を開始し、ボヤのうちに消し止める必要があります。

そのためには、統合失調症が疑われる症状が認められた場合はすぐに医療機関を受診し、治療を開始してください。

また、一見正常で健康に見える段階でも、初期症状や原因不明の認知機能障害がみられたときには専門の医療機関に相談することが望ましいです。

実際に早期から治療を開始したケースほど、症状が軽く、社会への適応も早いことが多いです。

「無性にイライラする」「普段できていたことができない」「やる気が出ない」など、些細な変化でよいのでいつもと違うと感じたときはぜひ受診してください。

周囲の方へ

ここからは、統合失調症の患者様に関わる周囲の方にお伝えしたいことを書いていきます🌼

統合失調症の「過敏さ」は通常の敏感さという域を超えています。

これは、「自我障害」という症状によるもので、周りの世界と自分を隔てる壁がないような状態なのです。

そのため、絶えず侵入を受けたり、自分の内面が外に筒抜けになったりしていると感じています。

いってみれば、まとまっている衣服がスケスケになっているようなもので、これが体だけではなく心もスケスケの状態ということです。

想像してみるととても怖いですよね。

そういう状態から自分を守ろうとして、人との接触を避けたり、雨戸を閉め切った部屋にこもり、人目を避けて夜だけ外出したりするようになります。

「何をしてるんだ」と思ってしまうような症状も、ご本人にとってはちゃんと意味があります。

統合失調症の方と接する上では、このような点に配慮して、ご本人の脆い安全性を極力脅かさないようにすることが大切です。

個性が強い人や感情的な人が熱心に関わると、よかれと思ってやったことでもご本人にとってはストレスになって症状が悪化してしまうこともあります。

では、どのように関わればよいかというと、強い感情や我を出さずにご本人のペースに合わせて受容的に接することが第一です。

大きな声や乱暴な喋り方は避けて、小さめの柔らかな声でゆったりと話してください。

また、ご本人をぐいぐいとこちらのペースに引っ張ったり、期待を押し付けたりすることも避けてほしいです。

何か新しいことを始めるときは、「あなたはどうしたい?」「あなたはどう思う?」と本人の意思を常に確認することが大切です。

「病識がない」と言われるけれど…

統合失調症の方は病識がないと言われることも多いです。

これは、「自分は病気なんだ」という認識をもっていないということです。

そういう方が多いのは本当なのですが、病気の自覚はなくても何らかの苦しみや不快感を抱えていることがほとんどです。

病気かもしれない、何か変だという「病感」とよばれる感覚を抱く場合もあります。

これが治療につながるために非常に大切な引き網となります。

この引き網を緩めたり引っ張ったりしながら、慎重に、治療を受けてみようという方向に手繰り寄せていきたいのです。

病院に来るのはとても勇気の必要なことかもしれません。

しかし、もし受診していただけたら、私たち医療スタッフはご本人の心情に寄り添いながら治療的に関わっていきます。

風邪をひいたときに内科に行くように、「ちょっと行ってみようかな」という感覚で病院を訪れる人が増えてほしいと願っています😊

(引用文献:岡田尊司(2010)統合失調症 その新たなる真実,PHP研究所)